吉備中央町方面
巨木探訪:再三、加茂川町(1)
12月の最初の日曜日。
好天で少し歩けば汗ばむほどである。
こんな日はどこかに出かけなきゃなるまい。
とは言っても、最近は午後5時になるともう薄暗い。
写真を撮るにしてもぎりぎり4時半くらいが限界か…もちろんあまり遠くには行けない。
近場で残っている探訪地のうち、加茂川町の残りを片付けることにした。

市内を抜けると時間がかかるので、今回は旭川沿いの裏道から国53に出て御津金川から県31を上って行くコースにした。
下加茂からそのまま県31を走るか国429に入るか…ちょっと迷ったが国429の方へ。
特に理由はないのだが、何となく、である。
何となくついでに『道の駅かもがわ円城』に立ち寄る。
そして白菜とキャベツと小カブを購入。

道の駅から少し北に行くと広域農道が頭上を横切っているのだが、その手前で右折し、すぐに左折して直進。
道なりに進んで行くと案田地区の中を走ることになる。
近くには「案田のネズ」があるのだが、今日はそちらはスルー。
1kmちょっと走ると右手に化気神社の鳥居がある。
車で入れるようなのでそのまま進んで行った。

化気神社には特に目当ての巨木があるわけではない。
社叢が県指定郷土自然保護地域になっており、資料に『神社の北側には樹齢300余年のスギ、ヒノキなどの大木が生育し…』と記されているので、もしかして、と思って訪れてみた次第。
しかし、いわゆる『巨木』は無かった。

特に落胆するでもなく、次の目的地へ。
国429を北上して小森温泉のところで県371に左折。
2.5kmほど走り豊岡簡易郵便局の手前で右折して山中に向かう。
実はこの道は以前探訪した「栗の木尾の一本桜」に向かう道でもある。
目的は一本桜より少し手前の民家の裏手にある「豊岡下のニガキ」。
以前は所在地がピンポイントで掴めていなかったのだが、新しくなったyahooおよびmapion地図では地番が詳細になったので分かるようになったのである。

さて該当する地番に行ってみたのだが(近隣にはまったく民家は無い!)、どれがニガキか分からない。
民家の裏手の小高い所にツバキなどが見えるので、あの辺りか、と思って行ってみると…
そこには切株が残されているのみだった。
そぐ傍らに祠があることも資料の記述と一致しているし、かなり傷みが激しい、とも記されていたので、この切株に間違いなかろう。
豊岡下のニガキ、現存せず。
(注:この樹は資料『樹樹のかがやき』ではニガキ、『岡山の巨樹老樹名木』ではキハダ、と記されている。どちらが正しいのかは知らない。ニガキもキハダも内皮が苦く健胃薬に用いられたそうである。)
とりあえず確認はできたので次へ。
県371をそのまま西進し、県66に当たった所で左折し南下。
2kmほど下って左手の県372に入り、さらに2kmほど進むと右手に三納谷地区に続く道がある。
三納谷へはもっと手前からでも入れるのだが、道が細くてややこしいのでこちらから回ることにしたのだ。
この地区には「三納谷のカゴノキ」(案内板には「贄田のカゴノキ」と記されている)と「金田の大クス」の2本の巨木がある。

カゴノキの方は地番がわかっているのでピンポイントで所在地を掴むことができた。
クスノキの方はよくわかっていないのだが、カゴノキから歩いて5分くらい、という情報があるので歩いていれば目につくに違いない。(常緑樹なので冬場では目立つであろう…という読みである。)

さて、カゴノキの方はあっさりと見つかった。
地区内で最も高い位置に車を停め(以前にも同じ場所に停めたが、墓があって傍らが空地になっている)、降りた瞬間に地図を見るまでもなく発見した。
以前は見つけることができなかったのに今回発見できたのは、地図のおかげだけではあるまい。
数多くの樹を見てきて、勘と知識が発達してきたのだと思う。

畑の畔伝いに樹下まで行けそうなので行ってみたところ、案の定辿り着くことができたのだが、樹は民家の敷地のはずれに立っている。
位置的に逆光になるので反対側に回りたいのだが…と思っていると、民家から爺さんが出て来た。
しかも私にはまったく気づかず、何やら高枝バサミで枝を切っている。
ここで勝手に侵入すれば怪しい奴である。
声をかけようか、とも思ったが、家の裏手の方から現れるとやはり怪しい奴である。
ここは一旦撤退して…と畦道を引き返す途中、ならば正攻法で正面から行けば良いではないか、と思いついた。
人見知りな私としては随分と思い切った行動である。
これも何度かそういう経験をしてきたからこそ、である。

少し歩いて家の正面に回り「こんにちは。」と声をかけた。
爺さんが認識したところで、すかさず「すみません、木を見せてください。」
もちろん断られるはずがない。
「大きい木ですねぇ…」などと言いながら数枚写真を撮影。
樹齢400年ということで主幹には大きな空洞があるが、支幹から先の樹勢は頗る良いようである。
一段落してお礼を述べようと思ったら爺さんの方から話しかけてきた。
「この木はなぁ、250年前に家が火事になった時に火がついたんじゃ。」
「ああ、それで空洞になってるんですね…」
「それでもな、どんどん(表皮が欠損部を)巻き込んでなぁ。強い木じゃわ。」
爺さんの言うことには、爺さんが子供の頃より20cmほど巻き込んでいるそうである。
話が終わると爺さんは「そうじゃ、ユズを持って帰られるか?ユズ風呂にでもせられえ。」と手土産まで持たせてくれた。
どうやら先ほど切っていたのはこのユズのようである。
ついでに「金田の大クス」のことも尋ねてみた。
「この先の三叉路を50mほど進んだところのちょっと奥にあるわ。」とのことである。
「道から見えますか?」
「おお、見える。」

もう一度丁重にお礼を述べて辞した。
それにしても手土産までもらったのは初めてであるが、嬉しいもんだ。

  流れ柿  カゴノキ
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