津山市加茂町
巨木探訪:加茂町(6)
車に戻り林道を下っていくと加茂町倉見である。
県336と合流したところで右折。
1kmほど進んだところで左折し庄原地区に向かう。
1.5kmほど進んだ右手の民家の庭に「倉見のヒノキ」があるはずなのだが…
それらしい樹を目で探しながら運転していたが見過ごしてしまった。
民家が途切れたところで引き返して来ると、今度は1本の樹に目が止まった。
樹下に立杭らしきものがちらっと見えたので、この樹に間違いなかろう。
少し先の道路脇に車を停める。

ヒノキは民家の右手の塀の中から大きく外へと伸びている。
無断で民家の敷地に入るのはさすがにためらわれたところ、うまい具合に塀の外側に裏山へ続く道があったのでそちらに入って行った。
(地図にはこの道が記されているが、未舗装の完全な山道である。)
道から見ると樹の幹は塀の上で2幹に分かれ、一方が大きく斜めに傾いでから上方に向かっている。
なぜにこのような形態になったのかは不明であるが、なかなか面白い。
写真を数枚撮ったところで、手の届きそうな位置の幹の穴に虫が出入りしているのが見えた。
よく見ると、なんと、ミツバチである。
こんなところに巣を作っているのか、と感心し、これも写真に収めた。

満足して、さて、そろそろ退散しようかと振り返ったところ…
目の前におばちゃんが立っているではないか!!
「ここで何かさりょうたんかな?」と問いかけられた。
どうやらこの家のおばちゃんらしい。
先ほどは人気がなかったのだが…おばちゃんの服装からして農作業に出かけていたのであろう。
それが家に帰ってみると何やらごそごそしている人影が見える。
カメラを片手に写真を撮っているようであるが、家に侵入する下調べでもしているのか?
とりあえず怪しいし、誰何してみるか…というところであろう。
こりゃまずいな、とは思ったが、特に悪いことをしているわけでもない。
(強いて言えば、家財の写真を無断で撮ったという点が問題か…?)

「あぁ、道を走っていたら大きい木が見えたので写真を撮らせてもらってたんです。勝手に入ってきてすみません。」
「まぁ、ここは道じゃからええけど…」
その口ぶりから察するに、裏返せばおばちゃんの胸中は
『敷地内じゃったら不法侵入でケーサツに通報するところじゃが…』ってなもんであろう。
しかしこれで疑いが晴れたわけではない。
ここは何とか話を繋がねば。
「それにしても大きい木ですね。」
このあたりで、ようやくおばちゃんの警戒が緩んだようである。
「ミツバチが巣を作っとるよ。」
「ああ、そうですね。最初は何かなと思っていたんですけど。それも面白いと思って写真を撮りました。」
疑いが晴れたのかどうかはわからないが、おばちゃんは背を向けた。
とりあえず私に対してそれ以上の関心は無くなった様子である。
これ幸いとおばちゃんの背中に声をかける。
「すみません、中に入って正面から写真を撮っていいですか?」
「ああ、ええよ。」
許可が下りたので庭に入り写真を撮る。
表に出るとおばちゃんは早や庭先の菜園で農作業中。
振り向きもしないその背中に「ありがとうございました」と礼の言葉をかけて辞した。

  ツクバネガシ  ムクノキ
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