奈良市
続古寺巡礼その24 興福寺
本日の最後は宿泊場所の近くの興福寺。
たいへん有名な寺で、改めてここに書くようなことはないけれど、比較的知られていない三重塔のことでも書こう。
この興福寺には奈良の景観上欠かすことの出来ない五重塔(写真1)とは別に三重塔がある。(写真2)(写真3)
三重塔は南円堂(写真4)のある場所から坂を下ったところに建っていて、場所もあまり目立たず、五重塔のあたりがゴールデンウィークのため観光客で賑わっているにもかかわらず、訪れている人はごくわずかである。
ただ、この塔は見逃すには惜しい。
鎌倉時代初期の建物だが、飛鳥時代の塔のような雰囲気もあって、大変美しい塔であり、国宝となっている。
その理由は2層3層に比べて初層が大きなため、逓減率が大きく感じるためだろう。
ただ、よく見ると2層と3層はそれほど大きさが違わず、初層だけが大きく作られている。
また、屋根については穏やかな逓減となっていて、2層3層は初層よりも深い軒の出となっている。
そのため、初層の組物は出組となっているが、2層3層は三手先の組物となっていて、深い軒を支えている。
この変化に富んだ外観と安定感のあるスタイルがうまく調和して、結果として繊細で美しいものになっていることは、大変優れた美的感覚で設計されていると言える。

前へ  一番上へ  目次へ  後へ