斑鳩町
続古寺巡礼その26 法隆寺
続いて、久しぶりに斑鳩の里へ行ってみることにした。
まずは法隆寺で、説明無用の唯一無二の存在である。
五重塔や金堂のある西院伽藍(写真1)(写真2)(写真3)は、聖徳太子の建立から一度再建されたようだが、それにしても7世紀の終わり頃の建築と言われ、奈良時代以前の建物がこのようにほぼ当時のままの姿で残っているのは奇跡と言えよう。
この寺の見どころは数多いけれど、ここでは中門(写真4)の感想だけ書いておく。
梅原猛が法隆寺について論じた「隠された十字架」は、私も若い頃読んで面白いと思ったが、聖徳太子の怨霊を封じるために建てられた鎮魂の寺という彼の説は、否定的な意見が主流となっているようだ。
しかし、中門の柱間4間の構造は通路の中央に柱が来ることになり、これは他に例がなく、かなり異様な印象を受ける。
寺の門は、俗界と法界の境界にある象徴的な存在である。
それゆえに通路の中央に柱があることは、やはり通行を制限する象徴的な意味があると考えるのが自然であろう。
ただ、門というものは、中のものを出さないということよりも、外から入るものを拒むという性質のものであると思う。
そのため、仁王は仏敵の侵入を許さないよう睨みをきかせているのである。
この中門は、この中にある法界(それは聖徳太子の世界かも知れない)を堅固に守るために、中央に柱を設けているとは考えられないだろうか。
そういう聖徳太子に対する人々の思いがこの寺を守り続け、今日まで奇跡的に存在しているのだと思う。

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