大阪市
続古寺巡礼その29 四天王寺
5月30日、関西に行く用事があり、四天王寺へ行ってみる。
この寺は593年に聖徳太子が創建した、わが国で最も歴史の古い寺のひとつであるが、これまで数多くの災害に見舞われ、あまり古い建造物は残っていない。
特に中心伽藍が鉄筋コンクリート造りの再建であるため、これまで二の足を踏んでいた。
実際に訪れてみると、再建と言っても時代考証をしたうえで創建時の伽藍を復元しているため、それなりに面白い。
この写真ではわからないが、五重塔の屋根の傾斜が緩やかで、特に最上部の屋根が平たくなっているのは、古い時代の特徴であり、法隆寺の五重塔、薬師寺の東塔も当初はこのような屋根であったらしい。(写真1)
これも写真ではわかりにくいけれど、金堂、中門の屋根を錣(しころ)葺きとしているのも大きな特徴で、寄棟の屋根の上に切妻の屋根を乗せた造りとなっている。(写真2)
錣葺きというのは屋根を2重に掛けたもので、下重の屋根が兜の錣(兜の頭を守る本体部分を鉢、ここから横や後ろに垂らした部分を錣という)のようなのでこの名がある。
これがこの時代の特徴かどうかはよくわからないが、法隆寺の金堂も当初はこういう造りであったとも言われているし、同時代に作られた玉虫厨子はこの造りとなっている。
この寺はたいへん広い敷地であり、戦災に遭わなかった建物もいくつかある。
六時礼賛堂もそのひとつで、江戸初期のたいへん立派な建物であり、国の重文となっている。(写真3)
六時礼賛堂の前には、池の上に石舞台という珍しいものがあり、こちらも国の重文となっている。(写真4)
ここでは、聖徳太子を偲んで行われる聖霊会の際には、実際に舞楽が舞われるそうだ。

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